マーケティング・企画業務

「顧客ニーズを満たそうとする努力」が企業をダメにする理由


馬場です。

 

ビジネスシーンなどで「顧客のニーズを理解・分析し、そのニーズに沿ったソリューションを提示せよ!」みたいなことを言う方は多いですよね。。上司から部下への説教文句などでもよく見受けられます。「お前、クライアントのニーズを理解してんのかよ!?」みたいな。

確かに課長クラス、マネージャクラスくらいまでの役職であれば正しい側面がありますが、もう少し上の視座になってくると、この考え方は明確に間違いです。

 

なぜ部長クラス以上になると、”顧客ニーズに寄り添って”はいけないのか。その理由をヒトコトで言うならば「組織としてのケイパビリティの独自性が失われるから」です。

具体的に解説していきます。

例えば、あなたが会計ソフトウェアを作成・販売している会社に所属していたとしましょう。そして、そのソフトウェアの特徴は「機能的には競合他社に劣るが、操作が簡単で使いやすいこと」であったとしましょう。

 

さて、こういったソフトウェアをいろんなクライアントに営業していくぞー!となるのですが、様々な営業先で「ウチの会社はこういう状況に置かれているから、こういう機能を付けてくんない?」とか「ウチはこうだから、こういう課金体系にしてくんない?」といった要望をもらう訳です。

 

そういう話を聞いた営業担当者は、プロダクト開発部門に「こういう機能を追加してくんない?じゃないと売れねーよ」という要望を出す訳ですが、だいたいプロダクト開発部門からは「いやプロダクトの仕様を簡単に変えることはしない。売れないのはお前らの営業力が足りないからなんじゃねーの?」という返事が返ってきます。

 

その返事を聞いた営業担当者は「プロダクト部門は顧客のニーズに寄り添うってことを知らない」と感じていく。。だいたいどの企業でも営業部門とプロダクト開発部門の仲が悪いのは、こういう背景があるからです笑 ある意味で運命づけられているというか、状況的に仲が悪くなるのが必然なんだと思います。

 

しかし、問題は営業部門でそういった思いを蓄積してきた方が出世したときに起こります。(だいたい営業部門出身者の方が声が大きく、処世術にも長けているため、彼らの方が出世しやすい構造にあります)

営業部門出身の方が取締役となり、「とにかく顧客ニーズに寄り添うんだ!」という事業方針になった結果、何が起きるでしょうか。恐らく顧客ニーズを細分化(セグメンテーション)し、各顧客に対応するためのプロダクト機能開発を進めることになります。

そして機能をモリモリ増やしていった結果、「操作が簡単で使いやすい」という元々のソフトウェアの強みが失われ、既存顧客が離反していくことになるのです。

 

目の前の顧客ニーズに真摯に応えたい。そんな純粋な思いで頑張ったのに、自社サービスから顧客はどんどんと離反していくという現象が起きていく…。

 

これが「顧客ニーズに寄り添った結果、元々の組織ケイパビリティの独自性が失われる」という現象が発生する具体的なカラクリです。だから顧客ニーズに寄り添ってはいけないんです。目の前のクライアントの期待に対して、盲目に答えようとしてはいけないんです。

 

 

先ほどは分かりやすさのために「操作が簡単で使いやすいソフトウェア」を扱っている企業を例に挙げて説明しましたが、他のサービスを扱っている企業でも同じ現象が起こります。

例えばコンサルティング業界のような『人的サービス』の場合でも考えてみましょう。コンサルタントと一口にいっても様々な専門性があり、社員のモチベーションマネジメントを専門にしている企業もあれば、ソフトウェア導入に伴う業務プロセス改善を専門にしている企業もあります。

これを「顧客のために、なんでもやります!」みたいなスタンスでいってしまうと、小器用に広く浅くできるように見えて、本質的なことは何もできないような薄っぺらいコンサルタント(なんちゃってコンサルタント)が量産されてしまう訳ですね、、

 

ただ「ヒトは目の前のお客さんの役に立ちたい」と願うものなので、このような構造的な仕組みを理解しておかないと不幸な事象が多く発生してしまいます。「競合企業に勝つために、顧客ニーズをセグメントするんだ!」とか「なんでもっと顧客に寄り添わないんだ!」みたいな言葉が社内で力を持ち始めていませんでしょうか。そういった言葉が出始めたら、それはもう黄色信号です、、

 

以上、「顧客ニーズに寄り添う」という考え方が会社をダメにする理由でした。

じゃあ、どうすれば良いのか?というと、「顧客ニーズではなく、顧客が置かれている状況に着目する」が答えなのですが、そこについては別の記事で書いていこうと思います。

 

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

Tagged , , , , , , , ,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)