突然の肌寒さが身を刺す今日この頃、プロサッカーJ1リーグはクライマックスを迎えています。
鹿島アントラーズが優勝争いを先導しているものの、追いすがるフロンターレ川崎は先日10人の中大逆転劇を演出するなど、熱いデッドヒートが繰り広げられています。
常勝鹿島か、シルバーコレクターという汚名返上を期する川崎か、残り試合から目が離せません。
光当たる優勝争いのその陰で、ある意味優勝争いよりも熱く繰り広げられているのが、J1残留争い。
誰も望むべくしてその地位に甘んじているわけではないものの、否応なしに引きずりこまれる降格の流砂。
残留と降格。わずかな勝ち点の差が生みだすその悲喜こもごもは、優勝争い以上のドラマを見せることもあります。
そんな中、しばしば巷で語られる言説の中に、
「勝ち点40が安全圏」
というものがあります。
いやいや、過去を振り返ると勝ち点40点近くとって降格したチームもあれば、勝ち点30そこそこでも残留したチームもある。
結局のところ、勝ち点何点が安全圏なのよ????
というわけで、今回は勝ち点1の差がドラマを生む残留争いに焦点をあて、勝ち点を何点とれば残留できるのか、統計を使って調べてみました。
さて、どうしたものか
過去からレギュレーションが色々変化しているJ1リーグ。
16-18位が無条件に降格するシーズンもあれば、他のルールが適用されるシーズンもある。。。
というわけで、今回は下記の条件に則って考えました。
- J1リーグのチーム数が18となった2005年以降を対象とする
- レギュレーションは2017年のもの(=16位以下が降格)を採用
1、2に則って考えれば、「残留する」=「15位以上になる」ということなので、15位になる条件を調べてみました。
※統計的な手法に誤りがあれば適宜、ご助言下さい。
15位以上になるための勝ち点とは・・・
データはJリーグのサイトよりJ1リーグの2005-2016年に渡り、全チームの順位と勝ち点を利用させて頂きました。
ビックデータの時代。データ入手も手軽になったものです。
さて、手始めに基礎統計量算出。
12年間の合計216チームの平均勝ち点は約47点(標準偏差13)。
思ったよりも伸びなかったがこんなものか。。。
勝ち点と順位の関係をプロットしたものが図1となります。
※◎はそれぞれの年度のチームを意味する
さて、分析を簡単にするために、順位を無理矢理定量データと見立てて、勝ち点を独立変数、順位を従属変数とした回帰式を算出。
簡単に言えば、
勝ち点何点取れば、順位が何位になるのかを式にした
というわけです。
それがこの式、
Y (順位) = -0.378X(勝ち点) + 27.234 (R² = 0.8992)
例えば、勝ち点60をとったとすると、
-0.378×60(勝ち点) + 27.234 = 4.55(位)
ということで、過去の傾向から60点とれば5位くらいに位置付けるとのこと。
それでは、この式を使って15位になる勝ち点を逆算すると
-0.378×33(勝ち点) + 27.234 = 14.76(位)
すなわち、勝ち点33点をとれば、15位以上に位置付けることが可能になるということです。
勝ち点33点は安全圏なの?
過去の傾向からすれば、勝ち点33点がひとつの目安となりそうです。
そうは言うものの、勝ち点33以上とっても降格するケースは何度も目にしたことがあります。
次の視点として、勝ち点33点はどれくらい安全なのというところを考えて行きたいと思います。
注目したのは12年間で降格した36チームの勝ち点。
勝ち点33がこの36ケースの中で、どのように位置づけられるのか考えてみました。
因みに降格36チームの平均勝ち点は約26点(標準偏差7)。
(面倒な人は読み飛ばしてください)この数値を基に33点を標準化、正規分布すると仮定してNormdistで正規分布関数の値を算出しました。
その結果、降格するチームが33以上の勝ち点を獲得する確率がおよそ19%ということがわかりました。
すなわち、勝ち点33点取れば約8割の確率で残留することが出来ると言えそうです。
ただ、降格確率約19%とは5ケースに1回、つまり2年に1チームは33点以上取って落ちるチームがあるということ。
せめて降格確率5%以下にはしたい、ということで計算すると、勝ち点39点以上で降格する可能性は4.6%。言い換えれば、勝ち点39点とれば残留確率95%。
何ともまあ、つまらない結論ですが「勝ち点40は安全圏」はあながち間違いではなく、実際のところ勝ち点40点で降格したケースはなし。
勝ち点40点がやはり安全圏、と言えそうです
勝ち点33点が安全圏とならない場合は?
勝ち点33点で8割残留という説。
過去に勝ち点33点以上をとって降格した例は9ケースあります。
それらを見てみると、下記のような特徴が見えて来ました。
- ぶっちぎりのびりがいる(=勝ち点搾取の対象)
- 1位までの勝ち点が伸びていない(ぶっちぎりで強いチームがない) = 取りこぼしが多く勝ち点差が生じにくい
などの特徴が現れていると、優勝ライン勝ち点の減少、残留ライン勝ち点の上昇が生じ、勝ち点33点でも降格になっているようです。
今年はアルビレックス新潟が勝ち点搾取の対象となっているようですが、残留ラインはどうなるのか。
悲喜こもごもを演出する熱い残留争いから目が離せません!