馬場です。
たまにはマーケティングっぽい記事を書こうかと思います。
始めに結論から書くと、
・企業のマーケティングイシューは「スキマ時間の奪い合い」から「ながら時間(単純作業時間)の奪い合い」へ一部は移り変わっていくのではないか
・「ながら時間の奪い合い」のイシュー度が高くなった時代においては、ユーザがゴールを達成するために目や手を必要としない「音声メディア」に注目が集まるのではないか
という内容について書いていこうかなと思います。
企業が「ユーザの時間を奪い合う」理由
企業活動におけるマーケ戦略のイシューは様々な捉え方がありますが、1つの捉え方として「ユーザの時間(タイムシェア)をいかに獲得するか」というものがあります。まずはその背景について書いていきます。
近年企業では、「DAU(デイリー・アクティブ・ユーザ)」の数を主要KPIとする考え方が一部で流行しています。つまり、「毎日自社サービスと接点を持ってくれるユーザの数」を増やすことをゴールとして、いろんなことを考えていこうという流れです。
なぜDAUが大事なのかというと、サービスとの接触頻度は顧客ロイヤルティそのものであるためです。
毎日のように自社サービスと接触してくれているということは「ユーザにとってそのサービスが生活にとって欠かせない存在になっている(習慣化するレベルで生活に溶け込んでいる)」ということであり、それはすなわち顧客ロイヤルティが高い状態だと言うことができます。
そして、顧客ロイヤルティの高さはLTV(ライフタイムバリュー)、つまりは中長期的な売上げの先行指標として活用することができます。
みたいな話から、
『DAU最大化=顧客ロイヤルティ最大化=中長期売上げの最大化』という図式になり、DAU最大化を主要KPIにするのが良さそう、、というロジックになっています。
単に「売上の最大化」をKPIにすると客を騙して売上げを作る行為が氾濫しますし、「顧客ロイヤルティ」をKPIにしようとすると、ユーザの機嫌を損ねないタイミングでアンケートを取るのが難しかったり、NPSアンケートの取得で不正が生じたりするといった困りごとが生じます。
だったら、上のような図式に沿って「自社サービスを毎日使ってくれてるユーザの数」をKPIにした方が分かりやすいし、騙しあいや不正も起きなくて健全だし、顧客を幸せにしそうじゃないですか。
そんなこんなで「DAUを最大化することがKPI」であることが分かると、マーケターとしては「いかに顧客の時間を獲得するか」というのが重要な論点になってくるため、「ユーザの時間の奪い合い」という事象が発生していくというのが大きな流れであると私は捉えています。(もちろん、別の捉え方もあるとは思います)
「スキマ時間の奪い合い」がマーケティング上のイシューに
では、どのように顧客の時間を獲得し、自社サービスとの接触頻度を担保するか?というと、「スマホアプリだ!」という話になってきます。
スマートフォンという、いつでもデジタル空間に接続可能なチャネルをほとんどの人が持つようになったことで、企業はユーザのスキマ時間に対して価値提供できるようになりました。
例えば「電車の中」とか「友達を待つ時間」とか。そういった「集中して何かをするには短すぎるが、退屈な時間」に着目し、その時間を豊かにするようなデジタルサービスを提供することがトレンドになっています。
具体例でいえばスマホゲームやTwitterですが、これはスキマ時間を豊かにすること超えて主従が逆転してしまっているので、「スマートニュース」などが具体例としては適切かもしれません。あとは様々な企業アプリでも、スキマ時間の獲得のための施策を講じて成果が高まった事例が散見されたりします。
しかし、こういった潮流が強まった結果、スキマ時間の奪い合いが白熱し、なかなかタイムシェアを奪うことが難しくなってきているのが現状であると捉えられるのではないでしょうか。(スマホゲームをやる人が増えて、企業がスキマ時間になかなか手を出せなくなっている、、という捉え方もあるかもです)
音声メディアにより「ユーザのながら時間」にアプローチできる可能性
では企業がユーザとの接触頻度を高めていくために「次に着目すべきイシューは何か?」というと、「単純作業時間(ながら時間)の獲得に着目するべきではないか?」と考えます。
単純作業時間(ながら時間)というのは、「車を運転している時間」であったり、「料理を作ったり、アイロンをかけるなどの家事をしている時間」のことなどを指します。言葉で定義するならば、「ルーティン作業の時間で、あまり頭のスペックを使ってはいないが、目や手は離せない時間」などでしょうか。
広義の意味では、「夜ベットに入って寝ようとしている時間」や「お風呂の湯船に浸かって疲れを癒そうとしている時間」なども含まれるかもしれません。
ユーザから見ると、そういった単純作業の時間は刺激がなくて退屈です。もし、その時間を豊かにしてくれるような体験の提供が受けられるのであれば、喜んで受け入れる方も多いのではないかと考えます。
しかし、単純作業時には「目」や「手」のシェアを割けないため、スマホを見たり操作したりすることはできず、これまで「単純作業時間(ながら時間)に使ってもらえるようなスマホアプリを作ろう!」といった発想は描きにくい。
このような背景から、これまでは「ユーザの単純作業時間(ながら時間)にアプローチ」するような施策が脚光を浴びることは少なかったと捉えています。
ただし、こういった「目と手は使えないが、耳と頭は使える」といった状況特性を持つ単純作業時間(ながら時間)に対して、音声メディアを活用すれば価値提供できるのではないか?というのが筆者の主張です。
例えば英会話系のサービス(ベルリッツなど)であれば、「単純作業時間で英語が学べるようなアプリ」の作成にさらなるカスタマーサクセスの可能性があるかもしれません。
例えばファッション系のサービス(ZOZOTOWNなど)であれば、「今年度の流行ファッションについて、インフルエンサー同士がトークするような音声コンテンツの作成」に可能性があるかもしれません。
例えばエンタメコンテンツ系のサービス(集英社など)であれば、「今注目のマンガについて、インフルエンサーが語るような音声コンテンツ作成」や「既存作品のファンコミュニティが拡大するような考察番組の提供」などに可能性があると思います。
少しメタ化するならば、例えばコンテンツマーケティングなどがしたい企業はコンテンツをすべて音声メディア化して、パーソナリティが楽しく喋るような形で提供することで、単純作業時間(ながら時間)に入り込める可能性があると考えます。
「音声メディア」のマーケティング活用を阻む問題点
ただし、企業が今すぐに音声メディアをマーケティング活用して、大きなビジネス成果を上げられるのか?というと、疑問が残ります。
最大の問題点は、「音声コンテンツへのアクセシビリティ」にあると言えるのではないでしょうか。
先ほどの例で言うならば、英会話スクールの「単純作業時間で英語が学べるアプリ」はAppStoreで流通させればいいのでアクセシビリティが担保されていると思うのですが、ファッション系のサービスの「今年度の流行ファッションについて、インフルエンサー同士がトークする音声コンテンツ」などは、作成したとしてなかなかユーザに届かないという問題が発生しそうです。
しかし近年、様々な企業の取り組みによって、そういった潮目が変わり始めています。
まずは2018年にGoogleが「Google Podcast」というアプリをリリースしました。これにより、これまでiPhoneでしか聞けなかったことpodcastをAndroidでも聞けるようになり、裾野が広がり始めています。
また、Googleは今後音声コンテンツをSEOの検索結果に表示していくことも発表しています。これにより例えば、「〇〇アニメ 考察」と検索すれば、podcastのコンテンツが検索上位に出てくるような時代になっていくということです。
Googleが仕様変更している背景には、スマートスピーカーという新たなデバイスの登場・普及があります。Google homeやAmazon Echo、Line Clovaといったスマートスピーカーの普及が進んでおり、実はアメリカでは2018年段階でスマートスピーカーの普及率が41%にまで達しています。
このような各企業の動きから「音声メディアをマーケティングに活用する」という動きを各企業が取りやすくなるような環境整備が加速度的に進んでいくのではないかと考えています。
podcastメディアにとっての意味合い(オマケ)
そういった未来の中に、podcastの役割・社会的な存在意義があるように思っています。
なんたって、1円のお金を払わずにコンテンツを作ってくれるコンテンツ提供者をpodcastは大量に抱えている訳ですから、彼らをうまく資産として活かすことができれば、今よりもっと企業からの投資が流れる場になっていくのではないでしょうか。
そのように捉えると、将来は「Youtuber」ならぬ「Podcaster」みたいな職業が出てもおかしくないと思います。あえて次元を落としたメディアが未来に流行するとしたら、面白い現象ではないでしょうか。
だいぶ長文になってしまいました。
音声メディアを活用して、単純作業時間(ながら時間)を獲得するような取組みを考えられている方がいたら、ぜひお問い合わせください。(お役に立てるか分からないですが、、)
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!