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【考察】「サイコパス PSYCHO-PASS」と中国の監視社会の繋がり


アニメ「サイコパス PSYCHO-PASS」の考察記事です。

実はサイコパスのシビュラシステムに近い管理形態が、中国では既に実行されつつあるのをご存じでしょうか?

「サイコパス」の画像検索結果"

 

「監視による治安維持」を行っている中国

中国にはジーマクレジットという民間サービスがあります。「学歴」や「所属している会社」、「クレジットカードの返済状況 / 家賃の滞納状況」などによって、あなたの「信用スコア」を算出するサービスです。

慶応大学卒業、大手インフラ企業で勤続10年、既婚…といった様々な個人情報を提供していけば、自分の信用スコアを高めることができます。その一方で、何か不誠実なこと、道徳的でないことをした場合は信用スコアが下がっていく仕組みです。

この信用スコアが高ければ、例えば「賃貸物件を借りる際に敷金が無料になる」とか「クレジットカードの審査がすぐに通る」などの様々な便益を得ることができます。一方で信用スコアが低ければ、そもそも審査に通らず家を貸してくれなかったり、3か月分の敷金を入れないと借りられない…のような不利な条件を突き付けられたりする訳です。

もっと言えば、結婚するかどうかを決めるために「信用スコアの高さ」を重視する人もいるかもしれません。「収入1000万円以上で、信用スコア750点以上の人と結婚したいなー!」みたいな結婚の条件を挙げることが一般的になる時代が、すぐそこまで来ていると言えます。

 

ここで注目すべきは、信用スコアの算出ロジックが完全にブラックボックスであることです。どのような仕組みでスコアが算出されているか、サービス運営者以外は誰も知らないのです。(AI管理になると、サービス運営者すら理解不能となっていく可能性もあります)

もしかすると、Facebookで信用スコアの低い人と友達になるとスコアが下がるかもしれません。その辺で立ち小便をしているのが監視カメラに写っていて、そこから個人が特定されたらスコアが下がるプログラムが組まれているかもしれません。(中国では、街中いたるところに監視カメラが設置されています)

「どのようなロジックで算出されているか分からない犯罪係数によって、個々人の自由が規定される」という点で、これはシビュラシステムと同じです。

「シビュラシステム」の画像検索結果"

このような「よく分からない基準で、自分のスコアが数値化される」サービスが一般化しつつある中国では、驚くべきことに「国民が良い人に変わっていく」という現象が起きているそうです。

「よく分からないロジック」によって自分のスコアが変わると、いつも誰かに監視されているような疑心暗鬼を抱くようになります。そうすると、人間は道徳的な行動しかしなくなっていくのです。

そうして行動が変わると習慣が変わり、習慣が変わると人格が変わっていき、中国人が良いヒトになっていく…。国民の民度を高め、治安を維持するために、中国ではこのようなサービスの試行錯誤を具体的に進めている訳ですね。

 

デジタルによる監視社会を受け入れるか?

皆様は「デジタルによる監視社会」に賛成でしょうか?反対でしょうか?

第一感は「そんなの気持ち悪い」と思われる方が大半ではないでしょうか。僕もそうです笑

 

ただ、これから10年、20年と経っていくうちに日本の治安は確実に悪化していくことが予想されます。

移民の受け入れ数が拡大し、賃金格差が広がり、日本が徐々に貧しくなっていく未来において、今の安全性を担保することは難しい。京都アニメーションの事件のように、失うものが何もなくなった「無敵の人」をうまくマネジメントできなければ、自分が被害を被るかもしれない訳です。

「デジタルによる監視社会」の導入は、このような治安悪化を防ぐ意味合いがあります。そのようなことを踏まえても、「デジタルによる監視社会に反対」と言い切れるでしょうか。個人的には、悩み始めます。

 

アニメ「サイコパス PSYCHO-PASS」で、常守朱がシビュラシステムの存在を知ってなお何もできないのは、シビュラシステムなしで治安を維持できるような社会の在り方を描けないからです。

「最大多数の最大幸福を願った時に、シビュラシステム以上のマネジメントの枠組みを描けるか?」という問いに対して明確なビジョンを描けないと常守朱は「シビュラシステムを否定する」ことはできないのです。

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しかし、「とある人間が自由に生きたいと思ったときに、シビュラシステムに理不尽に邪魔されるような社会は本当に正しいのか?」という問題もあります。

まだ犯罪を起こしていない潜在犯の自由を不当に奪っていいのか。基本的人権を阻害しているじゃねーか!という主張ですね。

 

サイコパス2のラスボスである「カムイキリト」は、まさしくシビュラに自由に生きることを阻害され、生存権を奪われてしまった人間です。先ほどのジーマ信用で言えば、スコアを提示できない人間に対しては、どこも賃貸物件を貸してくれない。貸してくれないどころか、存在する人間としてすら扱ってもらえない…という状況となります。

 

まとめ

「デジタルによる監視社会を受け入れるか」は、今後大きな論点となってくると思います。サイコパス1,2は、このテーマに正面から立ち向かった作品です(残念なことにサイコパス3では脇道に逸れてしまいましたが…)

 

まとめると、我々は下記のような選択に迫られている…ということです。

選択肢A) 最大多数の最大幸福のために監視社会を導入。治安を向上させる代わりに、潜在犯認定された人々やカムイキリトのような少数の人間の自由を強く阻害する

選択肢B) デジタル監視社会の導入を見送り、迫害対象の基本的人権を尊重。治安を悪化に歯止めがかからず、「無敵の人」による被害を受けるリスクを甘んじて受け入れる

選択肢C) デジタル監視社会を導入しなくても、民度を高めて治安を維持できる方法を探す

 

どれも難しいですよね。近年のLGBTなどを強く擁護する流れをみるに「最大多数の最大幸福よりも、基本的人権の方が大事」という論調が今のところは主流ですが、日本の治安が悪化し、凶悪犯罪が頻発するようになってきた時に同じことが言えるか…という問題があります。

できれば選択肢C、つまりは第3の道を探したいですが、これが解けたらノーベル賞なんじゃないかと個人的には思います。シビュラシステムを否定しつつ治安を維持するにはどうすれば良いか?常守朱は、ノーベル賞クラスの問題に立ち向かっていく必要がある訳です。

「人類が進化すれば良いんだ!」みたいな発想もありますが、個人的には人間という生き物はそこまで優秀ではないと思っています…。

 

このような枠組みで、アニメ「サイコパス PSYCHO-PASS」を見ていただけると、より一層作品が楽しめるのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 


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