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エイリアン:コヴェナントは過去シリーズとここが違う!


ここ米国では既にエイリアンシリーズの最新作「エイリアン:コヴェナント」が公開されています(2017年5月現在)。

米国の大手映画批評サイトRotten Tomatoesでは71%、IMDbでは6.8 と今のところそこそこの評価を得ている本作ですが、一方で、

「なんか思っていたエイリアンシリーズと違う。。。」

「エイリアンがメインじゃないじゃん!」

「クルーの思慮が浅い。」

という言葉もちらほら。。。

 

 

十分に面白い作品であったものの、なるほど、確かに上記の感想を抱いたのもわかる、というのが米国で一足先に鑑賞した筆者の実感です。

 

「クルーの思慮が浅い」など多少の物語の粗はさておき・・・

 

「エイリアン」シリーズへの先入観で本作の見方を狭めてしまうのももったいない!

 

ということで、今回は本作(+前作プロメテウス)が過去のシリーズとどう違うのか、という点についておさらいします!

 

日本での公開は9月ですので、以下は本編の核心に迫る箇所はなく記述していきます。

多少のネタバレはありますので、気になる方はご注意下さい。

 

 

エイリアンのおさらい

今回、過去のエイリアンシリーズとして取り上げるのはエイリアン1-4で、エイリアンvsプレデターなどの派生作品は一旦除外します。

 

さて、過去のエイリアンシリーズはヒットメーカー達の登竜門であり、有名監督たちがメガホンを取っています。

リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、デビット・フィンチャー、ジャン=ピエール・ジュネ

 

それぞれ監督が異なるため、物語の雰囲気も若干異なりはしますが、基本的には主人公リプリーとクルー達と、エイリアンとの戦いを描くものです。

 

第1-3作まではエイリアンとの遭遇からエイリアンに寄生されたリプリーの死までの一連の物語が描かれ、第4作はクローンとして復活したリプリーとエイリアンの戦いが描かれます。

 

エイリアンを始めとする各種生命体の造詣、暗闇から襲い来るエイリアンの恐怖等々、SFホラーとして人気を誇る作品ですが、あなどるなかれ、意外にそのテーマの深さが本シリーズの魅力ともなっています。

 

例えば、主人公が戦う女性、またエイリアンが男性器を模したような造詣であることから、当時の時代背景もあり、フェミニズムを下地に置いているという見方もあるようです。

 

全作品で一貫しているのは、エイリアンの誕生、成長、繁殖を描くなど、エイリアンをひとつの生命体として物語の核に据えているということ。

 

女性主人公を据え、2では母娘関係を示すなど、どの作品でも生物としてのエイリアンとヒトとが対比して描かれています。

 

 
エイリアン新シリーズはここが違う!

さて、新シリーズですが、監督はエイリアン第1作の監督であるリドリー・スコット。

 

彼はエイリアン:コヴェナントに関わるインタビューで、

・第1作の前日譚を描くこと

さらに、

・“誰が何のためにエイリアンを生み出したのか”を描きたい

と語っています。

 

これが正に、「なんか思っていたエイリアンシリーズと違う。」「エイリアンがメインじゃないじゃん!」という感想を抱くことになった原因だと思います。

 

つまり、過去作はエイリアンがどんな生物でどういう行動をとるか、エイリアンを主体として扱ったのに対し、新シリーズは、誰がエイリアンを何の目的で造ったのか、という風にエイリアンが客体になっています。

 

物語の問いの中心が“エイリアン”ではなく、“エイリアンを生み出した誰か“に移っているわけです。

 

もっと言えばテーマが変わってしまっているんですね。

 

過去シリーズではエイリアンという一固体の誕生と繁殖を人間と比較して描いてきたのに対し、新シリーズではエイリアンの誕生の理由を描くことを通じて「生命とはそもそも何か」というテーマに踏み込んで描いているように思えます。

 

そのため、エイリアンそのものよりも生命を生み出す神様のような存在(あるいはその技術や力)を描くことが主眼に置かれています。

これは、生命倫理が問われるほどの技術を得つつあり、人工知能の成長も目覚しい現代の時代背景も影響しているのかもしれません。

 

そういった点で、本作ではエイリアン個体そのものを描くことはテーマの中心ではないので、ホラー映画としてのエイリアンの怖さは目減りしています。

過去作のイメージを強くもつファンからすれば何だそれ、となるのもやむを得ないのかも知れません。

 

だからこそ、新シリーズではテーマや視点が変化しているという事実を前提に鑑賞することが勧められるのです。

 

「エイリアン」のアンドロイド、「ブレードランナー」のレプリカント

エイリアンコヴェナントでは、前作「プロメテウス」に登場したアンドロイド、デヴィットが非常に重要な役割を持ちます。

人に「造られた生命体」である、という点が本作を楽しむ上で非常に重要になってくるでしょう。

 

その比較として、是非ご覧頂きたいのが同じくリドリースコットが監督する「ブレードランナー」。

 

詳細は過去の記事をご覧頂くとして、同作に登場する造られた生命体であるレプリカント(≒アンドロイド)と比較するとまた違った見方が出来ると思います。

 

「ブレードランナー」に登場するレプリカント、ロイは自分を造った創造主、あるいは親とも言えるタイレル社の社長に強烈な復讐心を抱き、殺害します。

 

一方で、エイリアンコヴェナント(とプロメテウス)に登場するアンドロイド、デヴィットも自分が造られた生命体であると認識しており、創造主に対して複雑な感情を抱いています。

 

ロイは設計上寿命が設定されており作中では主人公の闘いを命をとして楽しもうとするなど、「自らの生への執着」が描かれますが、デヴィットの場合はまた違った角度からの「生への執着」を見せます。

 

同じ監督が描く、人工生命体の対比は本作を観る上でまた違った視点を与えてくれると思います。

 

 

で、事前に何をすればいいの

コヴェナント日本公開は9月15日ですが、事前に「プロメテウス」の視聴は重要です。

ツッコミどころも多い作品ですが、物語のトーンがわかって頂けるのではないかと思います。

(過去のエイリアンシリーズも必須ですが、最低リドリー・スコット監督の第1作は見ておくといいと思います)

 

 

さらに、「プロメテウス」と「コヴェナント」をつなぐ物語がYouTubeで公開されています。

最近はYouTubeとかで、映画に繋がるショートムービーを展開するというプロモーションも増えてきているようですね。

ここでは前作の後のショウとデヴィットの姿が描かれます。

 

これらで予習をして公開を待ちましょう。

映画そのものは十分に見応えがあるものでした。レビューも追って公開したいと思います。

 


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