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【考察】30代になると「ハンターハンター」は全く別の話に見えてくる(2019/5/8更新)


馬場です。

 

最近、「ハンターハンターは少年誌っぽくないな」と思うようになりました。

大学生くらいの頃は、「”念能力”という独自で多様性のある世界観の元で、ゴンという主人公が世界を旅する王道少年マンガ」という楽しみ方をしていました。

でも最近読み返すと、「いわゆる少年マンガ的な主人公像を否定し、少年が大人になっていく姿を描写しようとしているマンガ」なのかなと思うようになりました。ちょっと哲学的な感じというか。

 

この記事はネタバレを多く含みますので、ご了承いただいた上で続きをご覧ください。

 

「ゴン」という少年の描かれ方

物語冒頭において、ゴンは典型的な少年マンガの主人公として描かれます。

「今、この瞬間に自分が実現したいこと」を明確に定め、そこに対して真っすぐに愚直に努力し、溢れんばかりの才能を活かして成功を、自らの願いの成就を勝ち取っていきます。

また、「自分のやりたいことに他者を巻き込み、最終的には他者を譲歩させ、味方に引き込んでしまえる」という人間的魅力を持っています。

「溢れる才能」と「他者の譲歩・応援を引き出す魅力」を武器として、今この瞬間に自分が実現したいことを次々と叶えていく、、、という王道的な少年マンガの主人公としてゴンは描かれます。

 

ハンター試験における最終試験のハンゾー戦(写真上)でも、真っすぐなスタンス・覚悟を示したことで相手から譲歩を引き出しました。

ゼパイルさん(写真中)に至っては、借金までしてゴンのハンターライセンスを取り返してくれました。幻影旅団のノブナガ(写真下)でさえ、ゴンの才能と純粋さに惚れてしまいます。

「自分が実現したいことを定め、ひたむきに努力し、他者を巻き込み、溢れる才能を活かして成功する」って、ワンピースのルフィを始めとする「少年マンガ」の主人公像そのものです。

 

ただし「溢れる才能」と「純粋さ」ゆえにゴンは、人生経験を積んだ大人から見ると「危うく」映ります。

通常、ヒトの人生ではいくら強く願っても叶えられない願いが多くあり、そういった挫折経験から他者との関係性のあり方や異なる価値観・正義の対立構造など、様々なことを学んでいくものだと思います。

しかし典型的な少年マンガの主人公であるゴンは、努力によって自らの願いを叶え、その裏側で他の価値観を排除できてしまう。だから「危うい」んですね。一歩間違えると大魔王に、幻影旅団の団長にもなりうる訳です。

 

キメラアント編におけるゴンの物語

しかし「キメラアント編」では、自由奔放に生きてきたゴンが精神的に大いに苦しむ様子が描写されます。

キメラアント編では仲間のカイトがネフェルピトーによって倒され、ゴンは自責の念に駆られつつ、激しい怒りの感情を抱きます。そして、「ネフェルピトーを倒し、カイトを元通りにしたい」と強く願い、ネフェルピトーに自分の願いを強制的に叶えさせるために、努力を重ねる訳ですね。

 

しかし敵の本拠地への突入後、ゴンを待ち受けていたのは「敵であるハズのネフェルピトーが、必死にコムギ)治療している姿」でした。

さらに、あろうことかネフェルピトーはゴンに対して無抵抗な姿勢を示し、「何でも言うことを聞く。だが今はコムギを助けるのを優先させてくれ」と言い出します。これを見て、ゴンは大いに混乱します。



恐らくゴンは、このとき初めて「絶対に自分の思い通りにならないこと」に直面したのだと思います。

ネフェルピトーにとっては「自らの命よりもコムギの命が重要」であるため、たとえ自分が殺されようともコムギを救済することに全力を尽くすことになるのですが、この価値判断の基準を変えさせることが不可能なことに、ゴンは気づいたのだと思います。

突入前は「力づくで言うことを聞かせればいい」と思っていたのですが、いざ現場にいってみるとネフェルピトーは無抵抗です。交渉の余地もありませんし、実力行使でネフェルピトーを殺してしまうと、カイトを元通りにすることができなくなってしまいます。

「自分の願いを我慢して、他者の言うことを聞かねばならない状況」に、ゴンは生まれて初めて置かれた訳です。

 

自分の願いが叶えられないことを知ったゴンは、とにかく怒ります。キレます。

感情を抑えきれなくなり、「ずるい!!」とか「勝手なこと言いやがって!」などと駄々っ子のように叫びます。少年マンガの主人公にあるまじき発言を連発します。

「自分の思い通りにならないことがある」という現実を受け入れられず、駄々っ子のように振舞います。

 

ヒトは社会的な生き物なので、「自分とは異なる価値観、願いを持つ他者の存在を受け入れ、時には妥協し、双方の利益が最大化するように関係をうまくデザインする」必要があります。

そして、このような仕組みを悟り、うまく他者との関係をデザインできるようになることを「大人になる」と言うのだと思います。

単視点的に自分の願いを叶える「王道的な少年マンガにおける主人公像」は現実的には成立しない訳です。

 

このように捉えると、ハンターハンターは王道的な少年マンガの主人公像を否定し、少年が大人になっていく姿を描写している物語だと捉えられるな…と思っています。

結局、キメラアント編ではゴンは現実を受け入れられず、感情のままに「ネフェルピトーを殺す」という選択を取ってしまうため、ゴンが今回の経験から学び、変化・成長した様子は未だに描かれていないですが、今後の展開が楽しみだなと思っています。

 

そして富樫先生のマンガは、そのような「既成観念」や「社会の現実」と正面から向き合って描いているのが本当に好きだなと。少年誌で、少年マンガの王道的主人公像を否定するとか、富樫先生しかできねーなと笑

 

長い記事になってしまいました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 


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2 thoughts on “【考察】30代になると「ハンターハンター」は全く別の話に見えてくる(2019/5/8更新)

  1. ゴンはクラピカに一度も「復讐は何も生まない」なんて言ってませんが・・・
    失礼ですが大人になってハンターハンターの深さがわかったとおっしゃるなら
    責めて最低限の内容理解はして欲しいものです
    ちなみに私はこの漫画が深いとも思いません

    1. コメントありがとうございます!
      あれ、そうでしたっけ…?今後時間があるときに読み返してみます!

      ありがとうございましたー!

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